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採算管理とは? 採算管理の方法

採算管理とは?

採算管理とは活動を金銭換算で評価し、対応策を実施することです。他の管理手法と比べると「損益/採算/利益/粗利を評価」するということに大きな特徴があります。「損益/採算/利益/粗利を評価」するためには、活動の「金銭換算」が必要になります。

例えば、非常に単純な訪問販売の例で、営業経費を使って訪問を行い、複数の商品を組み合わせて成約するような事業の場合、訪問回数x成約率x平均受注単価 -商品仕入れ価格 -営業経費=粗利=採算(損益)となり、これを管理するのが採算管理ということになります。

「管理」というのは、数値を取得、評価し、対策立案&実施を行うことです。PDCAでいうとCheck&Actionの行動です。つまり、採算管理は、事業の粗利を計算して、対策立案及び実施を行うことです。

KPI管理とは? KPI管理と採算管理の違い

似たような用語でKPI管理もあります。KPI管理は主に活動の量や回数、成功確率を数値で表したものです。例えば、先程の例で言えば、訪問回数と成約率、平均受注単価がKPIになります。勿論、費用項目もKPIに入れる場合もあります。その場合は、商品仕入れ額や営業経費などの金額もKPIと呼べるでしょう。

KPI管理では、行動がKPIに繋がっている必要があります。担当者が数値改善に向けた行動が想像できないようでは、行動の改善は見込めません。

KPI管理も採算管理も数値の管理という面では同じです。ただ、採算管理の場合は「採算」つまり損益を計算するところが大きな違いです。採算管理ではKPIを使って、金銭に換算してみることが必要になります。

採算管理の利点

採算管理の最大の利点は、金銭換算することで誰にでも分かりやすくなるということです。特に複数の部署が関係するプロジェクト・事業ではメリットが大きくなります。

先程の例では、訪問回数、成約率、平均受注単価、営業経費のようなものを考えてみましたが、この数値だけで高いか低いかなどの評価をできるのは恐らく営業部の方だけでしょう。他の部署の役員や社員には、詳細が分からな為、良いのか悪いのかは判断できません。しかし、採算(損益)を計算してみると、一般的に企業活動では黒字=善、赤字=悪ですので、誰にでも分かるということになります。

他のプロジェクト・事業でも、一般的に専門性の高いKPIは他部署の人には理解できません。これを可視化し、幅広い社内の人にプロジェクトや事業の状況を伝達していく可視化手法の一つが採算管理という訳です。

採算管理の注意点

採算管理の注意点は、赤字の場合の心理的影響が非常に大きいことです。前述の通り、専門性の高いKPI数値は部外者や役員には評価できませんが、採算管理は金銭換算するので誰でも理解できます。従って、役員や上層部からの反響も多くなります。

私が支援した企業でも、初めて採算を発表した時、特に赤字だった場合の社内の反響は極めて大きいものです。

勿論、社内の反響以外にそもそも事業・プロジェクトの実態を漏れなく把握できているかが最重要です。採算(損益/利益/粗利)は、プロジェクト・事業の撤退判断に直結しますので、誤解を防ぐ必要があります。

採算管理の方法

  1. 計算式を作る
    まずは採算(損益/利益/粗利)を計算するため、計算式を作る必要があります。計算式はExcel等で良いでしょう。計算式の中では、収益(売上)、直接費、配賦費を表現します。(配賦費の計算は行わず、直接費だけを計算に含めることもあります。)


    ○ 直接費とは?
    当該の事業やプロジェクトが存在しなかったら発生しない費用です。つまり、事業・プロジェクトをやめればこの費用は掛からなくなる筈のなので、事業・プロジェクトの費用として計上しましょうということです。

    ○ 配賦費とは?
    当該の事業やプロジェクトが存在しなくても発生する費用で、全社共通費とも言います。収益事業は全社共通で掛かる費用も稼がなければならないので、この数値を入れることがあります。
    (上の例では配賦費を省略しています。)
    配賦費について詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。
    ▶ 管理会計(部門別採算制/部門別損益計算)の計算方法
    ▶ 管理会計(部門別採算制/部門別損益計算) 配賦費とその計算方法
  2. データ取得方法を検討する
    どこからデータを取得するかを検討します。上の例で言えば、訪問回数は営業部門の日報からでしょうか、成約率は成約件数÷訪問回数で計算できそうです。他の項目も同様に考えていきます。

    ここでの要点は、なるべく取得が簡単で尚且つ実時間性の高いデータを利用するということです。よく、経理業務では1カ月終わってみないと集計できないということが発生しますが、1カ月前のデータでは殆ど全ての事業で古すぎて使えません。また、取得に手間が掛かってしまうと、実時間性が担保できません。結果として、PDCAがうまく回らないということになってしまいます。

    KPIや数値の取得はなるべく簡単に速くできるように考えます。

    場合によっては暫定値を使うことも検討します。例えば、掛った時間数に人件費平均単価を掛けて費用を計算する場合、人件費平均単価は月によって大きな変動がない場合が大部分です。そこで人件費平均単価には前月までの平均を暫定値として使えば、人件費平均単価の正確な値算出を待たなくても、大まかな数値を計算できます。

  3. 計算前提を整理する

    前述の通り、採算を計算する各項目は実時間性の高さが優先ですし、採算を計算するために計算値や想定値を使うこともあります。採算を評価するにあたって特に重要と思われることを整理します。採算管理の場合、社内への浸透度が高いので、誤解を招かないように前提をしっかり伝える必要があります。
  4. PDCAの体制を構築する

    採算は計算するだけでは意味がありません。計算するだけでは管理とは呼べません。数値を元に対策を検討し、実行していかないと改善に繋がりません。そこで会議体を設計してみます。

    例えば、月初から前月のデータを集め、対策や改善を検討する会議体が必要でしょうし、対策の進捗を確認する会議体も必要かもしれません。下記の例では1週目にデータ取得を行い、2週目月曜日のプロジェクト会合で発表、3週目月曜日に対策・改善策のReviewを行い、4週目で役員報告をする流れになっています。

いかがだったでしょうか? お役に立つ内容だったでしょうか? ご質問があれば、お問い合わせフォームからご一報下さい。当社では、採算管理の設計と運用でもご相談に乗っています。ご相談があればご連絡ください。

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