改善事例: 輸送機器部品 製造卸業(社員20名)
事例A輸送機器部品 製造卸業
(社員20名)
利益構造を見える化し、戦略を2軸化。
5000万円の赤字から、7500万円の黒字に躍進
作れば売れた時代には製造中心で事業運営を行うことができたが、近年マーケットインに移行するなかで、商品別管理から顧客(販路)別管理に切り替える必要があった。重点販路との取り組みを強化し、黒字回復した。
当社について
当社はいわゆるカーアクセサリ、カー用品の企画と販売を行う業種である。年商は10億円、社員は20名ほどであった。製造は自社内では行っておらず、外部に委託している。企画設計を経て、製造された商品は、カー用品販売サイト、用品店や海外ディーラに卸している他、自社店舗、自社Webサイトも保有している。
景気が良いときもあったようだが、若者の車離れや改造車市場の縮小などで、業績は下降傾向である。また、情報通信技術の発達によって、国外のアクセサリ&用品メーカが、Amazon、Rakuten、Yahooを通じて、直接販売を行うようになったことも、値崩れの大きな要因になっている。
組織
当社は機能別組織を採用していた。つまり、経営の下に販売、製造、総務といった機能を持つ下部組織を編成する形態であった。
市場成長期、企業成長期には、この機能別組織はよく機能する。なぜなら、このような状況下では個々個別の顧客に対応するよりも、効率よく製造・納品を行っていくことが重要だからである。市場は拡大しているので、どんどん物を作って納品すればよい。今でも、製造業はこの形態が多い。製造計画の元、一糸乱れぬ協調作業が原価低減には重要だからである。
採算単位別組織
一方、市場成熟期、企業安定期には、採算単位別組織が適している。採算単位とは、例えば、○○事業部、商社の営業課、小売・飲食の○○店といったものである。これらの組織形態では部署は主に顧客群・顧客層・販路に紐づけられている。事業部とは顧客、商品、ビジネスモデル(収益構造)が同一の部署である。商社の営業課長は特定の顧客を持って取引を行っている。店舗はそれぞれ別の顧客、顧客層を取り扱っている。このような組織形態の場合は採算単位の責任者、事業部長、商社の営業課長、小売・飲食の店長が権限を持ち、顧客からの売上(評価)を最大にすべく業務を執り行っている。
当然、PDCAのサイクルも採算単位別に行われるため、サイクル速度の高速化を図れる。成熟市場での代表的な組織運営である。
当社の組織再編
上記の検討を経て、当社は各販路をまとめて一つの採算単位とし組織を再編し、販路別組織とした。オンラインショッピングモールと用品店を卸売事業部、その他、海外ディーラ相手の海外事業部、自社通販部、直営店を採算単位とした。勿論、各事業部の実績を可視化した。即ち、全社の売り上げ・費用・利益を各事業部の売上・費用・利益に細分化することとした。
これにより販路別に利益構造が異なることが明確になった。販路別戦略・目標設定、利益構造を最適化を各事業部で行ったところ、次第に業績が改善していった。
管理帳票
参考までに管理帳票を記載する。元々、当社は商品カテゴリ別管理を行っていた。これも勿論重要である。同時に、改善後は事業別の管理を行うため、右のような管理帳票を活用した。商品別管理と販路別管理の違いを明確にするため、本稿に記載した。
若手社員の声
収益構造が可視化されたことで、社員にも大きな影響があった。各販路別部署の実績が明確になったことにより、メリハリをつけた賞与支給も可能となった。
結果
改善の結果は以下の通りとなった。まず、利益率が赤字から黒字化した。これには、販路別に取り組みを強化した結果が大きい。また、結果が明確になったことで社員のエンゲージメントにも良い影響があった。
BEFORE 導入前
- 経常利益率‐2%
- 数年前より売上低迷、打ち手が見つけられず業績悪化の一途。
- 開発・営業、流通、店舗等の機能組織であるが、全社業績悪化の不安から従業員の意欲減退。
AFTER 導入後
- 経常利益率 3%
- BPMにより、販路別に利益構造が異なる事を突き止める
- 販路別組織にアレンジ。販路別戦略・目標設定、利益構造を最適化
- 成果と報酬の見える化による従業員意欲向上。