営業部の目標設定: 目標制度 運用方法
営業やマーケティングは会社の数ほどあると言われるほど、種類が多いといいます。 そうは言っても、営業であれば、営業担当者の何かの働きが成約、注文に繋がっている筈です。 ここでは代表的なB2B(法人向け)営業を例に、 営業担当者の働きと売上の相関関係について考えます。 他の種類の営業も考え方は同じですので、適宜読み替えて下さい。
一番のポイント: 定式化する
KPIを設定する
目標設定の一番のポイントは定式化することです。何らかの営業活動が受注に繋がっていると考えると、突き詰めて考えれば結局のところ、受注数=行動量×確度、売上高=平均単価×受注数で表せます。売上高ではなく、利益基準の目標であれば、利益=売上高×(100%-変動費率)-経費となります。行動量、確度、平均単価のことを営業KPI(重要業績指標)と呼ぶこともあります。まずはこれらの営業KPIを改善していくことが目標となります。
従って営業部の部門方針は例えば以下のようなものになります。
図表1 営業部門方針
項目 | 前期実績 | 当期目標 | 部門方針 |
---|---|---|---|
行動量 | 商談1673件 | 商談2000件 | 前期から続けてきた業務改善の取り組みを更に強化、部員数はそのままに商談数を15%増加。併せてセミナーを強化する。 |
成約率 | 30.4% | 35% | 動画を中心とした顧客教育の強化、優秀者のノウハウ共有(スクリプトの見直し)を通じて、商談後の成約率の見直しを行う。 |
平均単価 | 1,423.5 | 1,500 | 顧客ヒアリングの結果、追加受注できそうな商品を積極的に紹介していくことで、単価上昇を図る。 |
売上目標 | 723,980 | 1,050,000 | 前述の3項目の改善の結果として、10億円を突破する |
変動費目標 | 68% | 65% | 前述の追加受注商品は変動費率も低いので、受注することで変動費率を低下させる。 |
営業経費 | 5,520 | 6,000 | 商談増加に伴い、営業経費も増加傾向にあるが、近隣客を優先すること、オンライン商談を積極的に活用することにより、成約当たりの盛業経費は抑える。 |
利益目標 | 226,153.8 | 361,500 | 前述の全ての行動で、3.6億円の利益を作る。 |
能力開発 | 新人1名 | 新人1名 | 欠員1名を補充。週1の相談時間を通じて、早期に予算を持たせられるよう能力開発を行う。 |
つまり左側にKPI、その隣に前期実績と当期目標を書き、どんな手段で目標を達成していくかという方法論を記載します。
なぜ定式化やKPIを考えるかというと行動と売上高の関係を可視化して、より効率の良い方法を発見したり改善したりするためです。つまり、結果をいきなり変えるのではなく、行動を変えることで結果を変えるという考え方です。特に未熟練者を部員に抱える場合や予算達成が難しい場合等、営業マネジメントとして極めて重要です。どうすれば受注が取れるのか分かっていない若手社員に「売上を上げろ」と号令を掛けるだけでは売上は上がりません。何をしたら良いか指導する必要があります。
いきなり売上目標、利益目標が難しい営業担当者に対しては、まずはKPI(特に行動のKPI)を目標に設定します。
B2B営業の例
下記の図は、セミナーからメールでの案内、訪問で受注を行っている活動の例です。
[図: 営業活動の定式化]
このように定式化してみると、この営業活動においては、 潜在顧客数×セミナーへの参加率×メールへの返信率×営業訪問成約率で成約数が決まり、 これに客単価=商品単価×商品点数を掛けると売上が計算できることになります。 セミナーへの参加率、メールへの返信率、営業訪問の成約率を向上させること、 商品単価と商品点数を増加させることが売上増加につながることが分かります。 売上を構成する各要素に対し、どんな行動が数値の改善に影響するか、 一つ一つ検討していきます。 この考え方では特定の施策が売上にどう反映するのかが 簡単に計算できることが要点です。
小売業などでは、商圏世帯数×チラシ配布率×商品単価×買上げ点数で 考えることもありますので、似ている点もあるのではないでしょうか。
改善の為には見える状態にすることが近道
改善の為には見える状態にすることが近道です。部下も過程と結果が見える状態から初めて自分で考え始めます。そこで、売上の裏付けとなる行動と成約率が、1.見える状態になっているか、2.見ているか、3.対策をとっているかという順番で考えます。今、マネージャである貴方からは売上につながる行動と確率のデータや営業活動KPIが見えているでしょうか? またそれを普段からみていますか。対策は取られているでしょうか? 部下の立場からはどうでしょうか?
データが明確になった後には、大きく分けて、確率を上げる方向性と行動量を増やす方向性を考えることができます。
確度(成約率)を上げる方法
改善についてはまず確率(成約率)を上げることを検討します。どうしても、もっと商品ラインナップが充実していればとか、広告予算をもっとかければという考えに傾きがちですが、まずは確率(成約率)を限界と思うまでしっかり上げましょう。確率(成約率)を上げてからでないと無駄金を使うことになります。
とは言っても確率(成約率)を上げることに王道はありません。何故なら、そこに集まっている見込み客の質が違うからです。余所でうまくいったことが必ずしも自社でうまくいかないのが営業です。結局地道に Try&Errorを繰り返すしかありません。自社の営業担当者の内、成績の優劣がある場合には、優れた営業担当者のノウハウを共有することで、確率(成約率)改善に効果があります。
タイムリーな営業を行う
卸売業などでは、時期に合わせてタイムリーな営業を行うこと、つまりしっかりした計画を立てて活動していくことが成約率の向上につながります。夏にアイスクリームを売るのは簡単ですが、冬にアイスクリームを売ることは難しいと考えられます。顧客である小売業が次の夏に向けてアイスクリームの商品ラインナップを決定するときに営業できるかどうかが、成否を分けます。
他にも例えば官公庁向けの営業では、予算検討、予算成立、予算執行の年間スケジュールが決まっていますので、売りたい商品・サービスに合わせて適切な時期に営業をすることが重要になってきます。
営業を掛けるには、顧客が検討・決定するタイミングが最も良いと考えられます。改めて年間計画と実施徹底を行うことも成約率向上に効果があります。
他にも、営業企画(イベント・セミナーなど)、営業要資料の整備、営業用スクリプト等顧客接点の改善、営業担当者の能力開発などを検討します。
営業の行動量を増やす方法
まず現状の業務見直し
行動量を増加させるためには、まず現状の業務を見直し、営業に不必要な業務から解放することが一番の近道です。不必要な業務の廃止、移転は、自分が楽したいと思われやすいため、部下から提案することが難しいものです。上司や経営者から積極的に社内に働きかけ、改革を実施することで、活動量が上がると同時に部下からの人気も高まります。省力化に成功した分は売上や粗利或いは活動量が増加するよう、部下に確約してもらいましょう。一般的に営業部員の省力化は売上にそのまま跳ね返るため、効果が大きくなります。
他には採用を行って人数を増やすことも考えられます。
営業活動には様々種類がありますが、どんな行動が売上・販売につながるのかという視点は同じです。
単価を上げる方法
皆さんも感じている通り、単価を上げるのは非常に困難です。特に日本では、90年代半ばから20年以上、経済成長率が1%を切っています。つまり商品の価格も値上がりしていないのです。そこで既存の商品の単価を上昇させるのではなく、既存製品の改良品をより高価格で販売することを検討します。要は価格帯を徐々に上げていくことです。プライスライン、プライゾーンと呼ばれることもあります。TOYOTAとLEXSUSのように思い切ってブランドを分けて、高価格帯に進出する方法もあります。
その為には、商品の開発、発掘が重要になります。付加価値の高い商品を販売し、その割合を徐々に上げていくことで、ジリジリと単価を上げていくことを考えます。
変動費率を下げる方法
変動費の最も大きな構成要素は仕入れ原価です。仕入れ原価を下げるとなると、仕入れ先は不満を漏らすかもしれません。新しく廉価な仕入れ先を探してくるという方法もあります。もう一つは仕入れ先が仕入原価(仕入れ先にとっては卸価格)に乗せている費用を削減してやることです。例えば、原材料の一括購入を自社で行い、仕入れ先に納品するとか、仕入れ先に自社物流を使わせるとか、仕入れ先への支払いを早くするとか、期間内で数量を取り決める契約にするなどの取り組みが各社でなされています。
消費者に商品を届ける業種である小売業、商社・卸売業、一般消費者向け製品製造業では物流費を改善することでも変動費率を下げることができます。
経費を下げる方法
営業経費も他の方法と同様に、額の大きいものから削減を検討します。例えば、交通費や宿泊費が嵩んでいるのであれば、近場の顧客を優先してアプローチしたり、ホテルチェーンとの年間契約にしたりということが考えられます。
育成・能力開発
育成・能力開発は営業に限らず全ての部署に共通することです。特に、売上を急に伸ばす全社目標がある場合、営業人員の育成・能力開発が遅れてしまうと、営業部が全社の足を引っ張りかねません。部内でのノウハウを共有し、未熟練者でもできる業務設計を行いましょう。
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